九魂猫骨董品店
「えぇと、どこまで話しましたっけねぇ…あぁあそこからですわねぇ。
そう、彼は逃げもせず恐れもせずにこう言ったのです。
なんて美しいんだ
その黒く艷めく鱗はまるで黒曜石、そこから覗く白き牙は夜空に浮かぶ三日月の様だ!!
蛇神様は驚きのあまり、その場を動けずにいました。
そして、彼の胸元にある鱗に気付きました。
あれは…あの鱗は…
蛇神様は動けないまま、頭の中で様々な思考が流れました。
昔見た景色、今居る場所、あるべき所、炎の海、焦げた木々、清らかな川、死肉の臭い、和やかな日々、何もいない暗い日々…
そして木漏れ日の降る祠の中…
そんな中、彼はさらに声を大きくしてこう言います。
そして、その目!
先程までの燃え盛る炎のような紅も美しかった、
だがその朝日の様に優しく、力強い赤い目が何よりも美しい!!
ーーー!!!!
蛇神様は、全てを思い出しましたわ。
遠い昔に過ごした幸福な日々を。
しかし、思い出しても、もう遅いのです。
闇に飲まれたその体は白くは戻りません。
それどころかどんどん闇に紛れ込む…
そして彼はまた言います。
私の祖先の守り神も、貴方様のような立派な蛇神様だったそうです
もうずっと昔に戦に飲まれ逃げてしまったと聞きました
私は祖先の願いである、蛇神様の祠を探しているのです
この我が胸にある鱗はその蛇神様の鱗、そしてこの太刀は昔に蛇神様に清めてもらった聖剣なのだと
貴方様は、その祠についてなにか知りませぬか
蛇神様は驚き、喜び、そして悔やみましたわ。
なぜならもう、邪神に落ちてしまったのです。
あの鱗のように白く美しい体には戻れないのですわ。
そして体の中には様々な怨念…
もう何を言っても信じてはもらえまい…
ならばせめて、彼に栄誉を…
そうしてこう言い放ったのですわ。」
手の中の彫刻が、熱を帯びたように熱くなった。
だが、手を離すほどの熱さでは無い。
まるで店主の話に同調してるみたいで、
私は彫刻を握りしめた。