雨の降る世界で私が愛したのは
翌日になるとなんとなくハルのことだけで園長に電話するのも気が引け、調査の日程の連絡が来るはずなのでそれを一凛は待つことにした。
もやもやとした気持ちのまま数日が経った。
園長からの連絡は来ない。
のんびりした感じの人だったからと一凛は自分に言い聞かせるが、ここ数日でイライラが増しているが分かった。
一凛は十年前の依吹の番号にかけてみる。
自分でも馬鹿だと思った。
同じ番号を依吹が使っているとは思えない。
十年経っているのだ。
呼び出し音が鳴り出したとき、知らない人が出たらなんて言おうと混乱し、やはり馬鹿げたことだと電話を切ろうとしたとき、相手が電話口に出た。
『もしもし』
男の声だった。
懐かしい声だった。
「もしかして依吹?」
『・・・・』
沈黙のあと、電話の向こうから静かに聞こえてきた。