雨の降る世界で私が愛したのは
結局それは課外授業の日まで続いた。
いつもだったらこういう日は必ず一凛はほのかと行動を共にするのだが、ほのかは別の女子たちのグループに加わり、一凛はひとり取り残された。
植物園には色とりどりの花が雨に濡れて咲いていた。
温室に入るとねっとりとした空気に圧倒される。
一凛はすぐに外に出た。
雨の混じった空気がいつもより澄んで感じて深呼吸をした。
課題は好きな花を一種類選びそれをスケッチすることだった。
ほとんどのクラスメイトは温室に咲くカラフルな花を選んでいるようだった。
一凛はスケッチブックが広げられそうな場所を探して園内を歩いた。
少し歩くと藤棚があった。
紫色の花がぶどうのようにいくつも垂れ下がっている。
その下に依吹がいた。