雨の降る世界で私が愛したのは


「俺さ、前に一凛にもうハルとは会うなって言ったじゃないか。今となって思えば俺もハルに嫉妬してたんだと思う。一凛のあの時の彼氏、えっと名前なんだっけ?」

「颯太さん」

「そう颯太と同じようにさ。もともとハルは愛想のない奴だったけどさ、一凛が会いに来なくなってから、前にも増して元気がなくなったように見えてさ。あいつ今でも相変らず一人だからさ、会いに行ってやれよ。ハルの奴きっとすごく喜ぶと思う」

 一凛は返事の代わりにゆっくりとうなずいた。

「あの頃はまだみんな子どもだったね」

 依吹はちょっとだけはにかんだ。

「ガキだったな、みんな」

 依吹は皿に残ったチャーハンをスプーンで掻き集め口へ押し込むと、胸ポケットからボールペンを取り出した。

「地図描いてやるよ、ハルのいる場所」

 薄い紙ナフキンに描きにくそうにボールペンを押しつけた。



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