雨の降る世界で私が愛したのは


 例えば人は記憶や言語の処理に優れていると言われているが、犬と比較するとき、犬は人とは比べ物にならない高い嗅覚と、それを記憶し判断の材料に使う能力をもっている。

 またイルカは人には不可能な超音波を使って他の個体と会話をする能力を持っている。

 もしイルカが人のように愚かであったら、イルカは人を超音波も使えない能力の低い動物だと判断するだろう。

 犬も人は単純な匂いしか嗅ぎ分けられない低級動物だと自身に与えられた高い能力を神に感謝するかも知れない。

(中略)死を理解するということは実は人でいう高い知能をもった者だけがなし得ることではない。

 殆どの動物が死と生の違いを本能的に理解している。

 ただ死に対する感情表現の方法が個々の生物学的理由によって変わってくるだけである。


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