雨の降る世界で私が愛したのは
そう思ったところでハルは自嘲気味に笑った。
そんなことを考えることじたいが愚かなのだ。
頭の上で声が聞こえた。
「さっきのは誰だ?」
見上げるとカラスだった。
ハルに無視されてもカラスはしばらく近くの枝に止まって檻の中をのぞいていたが、ぽとりと糞を垂らすと歌いながら飛んで行った。
「人間は人間と、ゴリラはゴリラと、カラスはカラスと〜」
カラスが止まっていた枝が揺れて雨雫を落とすのをハルはじっと見つめた。