雨の降る世界で私が愛したのは


「ちなみに俺は産婦人科でーす」
 そう言うとすぐにほのかに向き直り「ほのかちゃんも近い将来ママになるときはヨロシク!」と敬礼した。

 ほのかも「ヨロシク頼みもうす!」と敬礼を返す。

 いつの間にか彰斗の酔いに追いついている。

「一凛ちゃんの噂はまだ一凛ちゃんがイギリスにいた頃から知ってたよ、すごいね、尊敬するよ」

「そんな、颯太さんだって」

 一凛は自分のおちょこを手に取ろうとしてなんとなく手を引っ込める。

「なんで、もっと呑みなよ」

 お茶を飲みながら颯太は一凛のおちょこに冷酒を注ぎ足した。

 注がれた酒を呑みながら颯太を見ると目が合い颯太はにこりと微笑む。

 思えば、自分はこの人にひどい事をしたものだと今さらながら反省する。

 颯太はただ一凛のことをまっすぐに好きでいてくれただけなのだ。

 でもあの時の一凛は颯太と同じ気持ちにどうしてもなれなくて、最後はあんな別れ方になってしまった。




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