雨の降る世界で私が愛したのは
勉強もスポーツもできて、高校では生徒会長もやっていた颯太はどこかいつも気丈に振る舞っているように見えた。
今も酒を呑もうとしないところなど変わっていない。
きっと家庭でも完璧な父親を演じているに違いない。
颯太はどこで息を抜くのだろうかと思ったが、男性とはみな強がりな生き物なのかも知れない。
颯太の務めている大学病院は一凛の勤め先からさほど離れていない場所にあった。
「今度食事でもしようよ」
と颯太が言ってきたので
「家庭持ちの男の人が簡単に独身の女性を誘っちゃだめよ」
と一凛が返すと、颯太の表情が微かに曇った。
「子どもはまだいないんだ。それに妻も働いていて、夕食はいつも別々なんだ」
横で寝ていると思っていたほのかがむっくりと顔をあげた。
「そーゆーのに騙されちゃだめだからね一凛」
半分しか開いていない目で、水、水とテーブルの上をまさぐる。