雨の降る世界で私が愛したのは


 それどころかハルが不幸でも自分を必要としてくれれば、それで自分は満たされる。



 そんなの愛じゃない。



 一凛は初めて気づいた自分の感情にショックを受けていた。

「話を進めてくれ、俺はいつでもいい」

 岩の上から一凛を見下ろすハルの表情はよく見えなかった。

 一凛はしばらく黙ってハルを見上げた。

「分かった、ハル」

 一凛が檻から離れようとしたとき、ハルが岩から下りてきて檻の前にやってきた。

 一凛は立ち止まり振り返る。

 ハルと目が合った。

「そうした方がいいんだろう」

 ハルの黒い瞳に一凛の姿が映る。

 一凛は鉄柵を握りしめた。

「わたし達もうこんなふうに話せなくなる」

 ハルは何も言わなかった。

 ただ黙って一凛を見つめていた。




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