雨の降る世界で私が愛したのは
もともと住む世界が違うのだ。
一凛が望むように世界中から檻がなくなっても、目に見えない壁が人と動物の間には立ちはだかっているのだ。
その壁は現実の檻よりもはるかに強靭で決して壊れることはない。
もしその壁が壊れることがあるとしたら、それはそのままこの世界からの追放を意味する。
その先に未来や光などない闇だけだ。
世界はそれほど寛容ではない。
「へぇ、それでハルはすんなり承諾したんだ」
依吹は食後の一服に百円ライターで火をつけるとゆっくりと煙を吸い込んだ。
「いつからタバコ吸ってるの?」
「一凛はいつからそんなに酒を飲むようになったんだよ」
一凛の横には空になったビールの大ジョッキがすでに三杯並んでいた。
枝豆に手を伸ばそうとしてジョッキを持ち上げまたぐびりと飲む。
「まさかハルがメスのゴリラと仲良くするのに嫉妬してやけ酒してるんじゃないだろうな」