雨の降る世界で私が愛したのは


 それからの日々は日めくりカレンダーを作業的にめくるように過ぎていった。

 講演会の仕事が増え、そういう時は必ずと言っていいほどその土地の動物園から仕事の依頼がきた。

 一凛は事務的にスケジュールを埋め、それをこなすということを繰り返す。

 一定のリズムを刻むようにさくさくと仕事をこなしていくのは気持ち良かった。

 颯太からの誘いを受けてしまったのも、そのリズムに乗ってしまったようなものだった。



 一凛が待ち合わせの五分前に店に着くとすでに颯太は一凛を待っていた。

 レトロな洋館のような内装の店だった。

 テーブルには真っ白なクロスがかけられ一輪の花が飾られている。

「パリの下町をイメージしてるんだってさ」

 颯太が差し出したメニューを一凛は受け取る。

 てっきりフランス料理だと思ったら中華料理、それも点心だった。

 本場香港の点心師が作る料理はどれも食べるのがもったいないほど綺麗だった。


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