雨の降る世界で私が愛したのは


 半透明の皮が透けて見える蒸し餃子は今まで食べた中で一番美味しい餃子だったが、三個の餃子でいつも依吹が食べているチャーハンセットと同じ値段だった。

「イタリアンとかフレンチとか海外に住んでた一凛ちゃんは食べ飽きてるだろうと思って。それに昔から一凛ちゃんってサンドイッチよちもおにぎりだったしさ」

 颯太のそんな気遣いが一凛は素直に嬉しかった。

 二時間ほどしかいられないという颯太は白いポットに入った中国茶を飲んでいる。

 何度も颯太に薦められたが、今日は自分もアルコールはいらないと一凛は断った。

 この前依吹と二人で飲んだ次の日ひどい二日酔いになり、しばらくアルコールを口にする気になれなかった。

 食事をしている間も何度か颯太の電話が鳴り、その度に颯太は一凛にあやまり席を立った。

 電話はすべて病院からのようだった。

「ほんとうにごめん、こっちから誘っておいて。でも電源切るわけにはいかないからさ」


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