雨の降る世界で私が愛したのは


 そう一凛は思った。

 今も昔もまっすぐなところは同じだが、昔は思ったことをすべて口に出してしまうところがあった。

 自分の思いをすべて外に放出したい性格は今も同じでも今の颯太にはそれができない何かがあった。

 その何かが颯太を変えた。

 それが何であるかは一凛には分からないが、それは颯太の左頬の傷と関係があるような気がした。

「これから時々こうして食事につきあってもらえるかな」

 別れ際颯太は言った。

 食事だけならと一凛はありきたり過ぎる返事をしたが、颯太はほのかや依吹が言うような不倫予備軍なんかではないと思った。

「いつでも誘って」

 颯太の背中が寂しそうに見えてそう声をかけた。振りむいた颯太は嬉しそうに笑ったが泣き顔みたいな笑顔だった。






 一凛にその電話がかかってきたのは夜中の三時過ぎだった。

 最初は無視していたがしつこく振動しながら鳴り続ける電話に根負けし手を伸ばす。


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