雨の降る世界で私が愛したのは

事件の真相



 気づくと一凛は動物園の前に来ていた。

 さすがにマスコミは夜の動物園の前に張り込むようなことはもうしていなかった。

 夜の動物園は暗い森のように見えた。

 動物園に来たところで何ができるわけでもなかった。

 でもそうせずにはいられなかった。

 一目でいいハルに会いたかった。

 ピンクの羽に頭をうずめるフラミンゴたちの群れの横を一凛は通りすぎる。

 ほとんどの動物たちは夜は宿舎に入るが鳥類の多くはそのまま野外で過ごす。

 チラチラと雨を照らす光がやって来る。

 一凛は大きな木の影に隠れて警備員が通り過ぎるのを待った。

 事務所に向かった。

 いったい自分は何をしようとしているのだろうか。

 事務所の窓から光が漏れていた。

 窓に近づき中をのぞき込むとこちらに背を向け誰かが座っている。

 背中の小ささと入ったロゴから女性のスタッフだと分かる。

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