雨の降る世界で私が愛したのは


 男のロッカーを調べると中から何本かの注射器と違法ドラックらしきものが出てきた。

「すべてハルが教えてくれたことです」

 彼女は言った。

 男が死んでしまったのもほとんど事故だと彼女は言う。

 男の行為を止めさせようと近寄ってきたハルを畏れて男はハルを棒で殴りつけた。

 ハルの体には何カ所も殴られた跡があり檻に転がっていた棒には血と黒いハルの毛がこびりついていたらしい。

 一凛が思ったとおり、ハルは自分に飛びかかってきた男を振り払っただけに違いない。

 それがたまたま壁にぶつかり打ち所が悪かったのだ。

「それをなぜ」

 世間に公表しないのか。

 と一凛は言おうとしてやめた。

 一頭の凶暴なゴリラが人を襲って死なせたという単純な事件と、違法ドラックを製造しそれを動物実験し売ろうとしていた男が賢いゴリラにそれを咎められ事故的に死んでしまったという事件だったらどちらが動物園側にとって都合がいいか?



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