雨の降る世界で私が愛したのは


「これからどうするつもりよ、一凛」

「分からない、でもこのままハルを見殺しにすることなんてできない。きっとなにか方法があると思う」

 ほのかがハルを見るのは初めてだった。

 噂以上の大きなゴリラだ。

 夜中に一凛から電話がかかってきて、動物園に迎えにきて欲しいと頼まれたときはいったい何事かと思ったが、裏門の前に一凛と並んで立つ黒い雨合羽からはみ出たハルの巨体を見た時は驚いた。

 すぐに例のニュースで騒がれているゴリラだと気づいた。

 夜が明けたらハルが動物園からいなくなったことはすぐに分かるだろう。

 それもただのゴリラの脱走じゃないのだ。

 ニュースで話題の人を殺したゴリラなのだ。

 小さな動物だったらいざ知れずこのハルの巨体、逃げ切れるはずはない。

 捕まって一凛が連れ出したと知られれば、世間はどんなに大騒ぎするだろうか。

 一凛は今まで築いたものを全て失うかも知れない。

 ほのかはハンドルを握る手に力を入れた。



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