雨の降る世界で私が愛したのは
「依吹はさすが動物のことよく分かってるよね、将来はやっぱりお父さんをついで動物園の園長さんになるの?」
一凛は依吹に訊ねる。
「ならないよ」
「どうして?依吹は動物好きじゃない」
何も答えず黙々と歩き続ける依吹はもしかして何か怒っているのだろうかと一凛が思い始めたころ、二人は動物園の正門にたどり着いた。
「じゃあ一凛、俺こっちだから、またあした」
いつもの依吹だった。
「うんあした。今日はありがとう」
依吹は口の端を少しだけ上げて笑った。
依吹と別れて少し歩いたところで一凛は、あっ、と立ち止まる。
「今日はバレンタインだった」
もういないと分かっていても依吹が歩いて行った方向を見る。
『お世話になってる男の人には一凛ちゃんもちゃんとしたほうがいいよ』
ほのかの言葉を思い出す。