雨の降る世界で私が愛したのは

 
 依吹には昔から今でもずっと世話になっている気がする。

 自分は依吹に義理チョコを渡すべきなのだろうか?

 でもなんだか違う気がした。

 それに依吹もそんなもの欲しがっていないように思える。

 しばらく動物園の柵に沿って一本道を道なりに歩く。

 優しい雨だったのが激しくなってくる。

 地面と一凛の傘を叩き壊すような雨が落ちてくる。

 一瞬ぱっと周りが明るくなったかと思うと、黒い空を閃光が切り裂く。

 しばらくすると遠くで低い音がゴロゴロと響いた。

 少しするとまた空が光り、今度はそう間をあけずにさっきより大きな音が鳴る。

「きれい」

 光る空を一凛は見上げる。

 今、どれくらいの恋人たちが肩を寄せ合いこの雷を眺めているのだろうか。

 いつか自分も大人になったら、誰かと一緒に雷を眺めたりするのだろうか。





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