雨の降る世界で私が愛したのは
ひときわ太い光が空を走り抜けた。
そのとき動物園の奥から低い叫び声のようなものが聞こえた。
心臓がどきっとするほど哀しい声だった。
声は光を追ってやってきた雷の音で掻き消される。
一凛は耳を澄ました。
雷の音の余韻を縫いまた声が聞こえてくる。
誰が叫んでいるの?
眩しいくらい周りが明るくなったかと思うと、空気が振動するほどの爆音が炸裂する。
一凛は思わず両手で耳を塞ぎしゃがみ込んだ。
心臓の高鳴りがおさまるのを待って立ち上がった時にはもうその声は聞こえなくなっていた。
それでも一凛はしばらくその場で声がまた聞こえてくるのではないかと待った。