雨の降る世界で私が愛したのは


 結果は?

 と訊くと、「見ごとに玉砕しました」と彰斗は答えた。

 どこかこの辺にゆっくり酒が飲めるところはないかと訊ねる彰斗に一凛は自分は行ったことはないが、と、何度か前を通ったことのあるスナックを教える。

 いつもオープンしているのかどうか分からないような店だったがこの辺りではその店しかなかった。

 場所を何度説明しても首をかしげる彰斗を仕方ないので店まで連れて行ってやることにした。

 傘をさして並んで歩くと小柄の印象だった彰斗はそんなに小さいわけではないと気づく。

 あの時は颯太の横にいたのでそう見えただけなのだろう。

「あの颯太さんにはわたしとここで会ったことを言わないでいてもらえますか?」

 怪訝そうな顔をする彰斗を横目に一凛は、自分が父の実家の店を手伝っているのには複雑な事情があり、身内の問題を人に知られなくないのだと説明する。

 よくこんなにつらつら噓が出てくるものだと、一凛は言いながら思った。



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