雨の降る世界で私が愛したのは


 最初は颯太は自分でって言っていたんですが、直前になって俺に頼んできたんです。

 なんとなく異変に気づいていたのかも知れません。

 颯太は表立っては何も言いませんでしたが、それはショックだったと思います。

 生まれてくる前までは英才教育をして天才に育てるんだ、とか息巻いてましたからね。

 颯太ってあんなでしょ。

 挫折知らずって言うか、人より自分が優位に立つ人生しか知らない奴だったんです。

 颯太は自分の子どもが普通の子どもでないことを最後まで受け入れることができなかったんです。

 颯太はね、一度もその子を抱きかかえることをしなかったんですよ。

 自分の子なのにね」

 一凛は足を止める。

 同じように立ち止まった彰斗と目が合った。

「ひどい奴でしょ、俺もそう思った。

 もちろん奥さんも。

 とくに奥さんは、うん、一番辛かったんだと思う。

 こんなふうに産んでしまった自分が悪いと、一人じゃ抱えきれない思いを颯太に当たってしまうのも無理はないと思う。


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