雨の降る世界で私が愛したのは


 その子が死んで数ヶ月経ったある日、颯太の顔に傷ができてた。

 最初は奥さんと喧嘩してつけられた傷かと思ったけど、颯太は否定しました。

 俺は颯太は自分で自分の顔に一生消えない深い傷をつけたんだと思う。

 だってその傷は、死んだ子にあった顔の痣と同じ場所だったんです。

 今でもあるでしょ颯太の顔に」

 彰斗は自分の右頬を指差した。

「颯太は颯太なりに悩んで後悔して苦しんでたんですよ。

 救急に移ったのも子どもを見るのが辛かったんだと思う。

 誰にもそれは分からなかったけど。

 そして颯太は今でもその真っただ中にいる。

 一度も子どもを抱けなかった自分を赦せずに。

 颯太の奥さんに颯太を赦せと言うのも酷だと思うんです。

 傷ついた二人がお互いを支え合うのは美談かも知れないけど、現実はそんなに簡単じゃない。

 あの二人ほんとうに別れたほうがいい。

 あの二人に今必要なのは一緒にいる努力じゃなくて別れる努力だと思う」



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