雨の降る世界で私が愛したのは


 最後の言葉は彰斗自身にも言っているように聞こえた。

 ちょうどスナックの前に着いた。

 一凛も一緒にどうかと誘われたがまだ店の仕事が残っているからと断った。

 最後に彰斗は言った。

「人ってそんなに頑張らなくていいですよ。ね、一凛さんも」

 スナックのドアを開けるとカラオケの歌声が流れ出てきた。

 それじゃあ、と彰斗は店の中に入っていった。

 彰斗と二人で歩いて来た道を一人で戻る。

 一凛は最後に颯太と会ったときの、あの泣き顔のような笑い顔を思い出していた。

 彰斗の言うように奥さんと別れたとしても、颯太の悔いが消えることはないだろう。

 奥さんが、全ての人が颯太を赦すと言っても颯太は自分を赦さない気がした。

 颯太はこれからもずっと自分を責めながら生きていくだろう。

 急にハルに会いたくなった。

 一凛は走り出す。

 今まで何度も自分に問いかけた。



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