雨の降る世界で私が愛したのは


 これ以上しつこくされると警察に電話することも考えていると言われたところで、颯太は自分が連れて帰るとつい約束してしまった。

 電車の乗り継ぎの間に何十回目かの電話を彰斗にかけると、電話口に彰斗が出た。

 どこにいるんだ、とそれだけ訊くとスナックで飲んでいると言う。

 電話の向こうから陽気なはしゃぎ声とタンバリンを叩く音が聞こえてくる。

「次は彰斗ちゃんの番ね〜」女性の声がした。

 このまま引き返そうかと思ったが、目の前に電車が滑り込んできた。

 それに乗れば彰斗のいる駅までたったの二駅だった。

 降り立った二駅目のホームで彰斗から聞いた店の名前を検索すると駅からそう遠くはなかった。

 改札を出て通りに出ると誰も歩いていない。

 この辺りの人は車が足代わりなのだろう。

 それにしても夜が早い町だなと、颯太が傘を広げ歩きだした時道の反対側を歩く女性が目に飛び込んできた。






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