雨の降る世界で私が愛したのは


 一凛は自分が出国する手助けをして欲しいとほのかに言った。

 公表はされていないがきっと警察は自分がハルの脱走に関係していると気づいていると言う。

 チケットの手配とできればほのかが搭乗する便が何かあったときにいいと言われ、ほのかは頭を抱える。

「そんなの無理よ。それにもし見つかったらわたしまで」

「絶対にほのかが手を貸してくれたなんて誰にも言わないから。だからお願いほのか」

 ほのかは一凛の必死な視線から逃れるように店内に目を泳がせた。

 一凛が小さな声で何か言った。

 え?っとほのかは一凛を見る。

「それと、できたらそのお金も貸してほしいの。警察に見つかると困るからカードも使えないし、お金もおろせなくて」

 今どうやって生活しているのかと訊くと一凛は黙った。

 最初は気づかなかったが一凛の着ている服はハルを動物園から連れ出した夜に着ていたものと同じで、でもずいぶん洗いざらされている。

 


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