雨の降る世界で私が愛したのは
「だってわたしは動物のための仕事をしているんだもの」
「最近よく一凛の代わりにテレビに出てるうさんくさい女、なんて名前だっけ?」
一凛をちらりと見る。
「ほんとうに自分の仕事をまっとうするなら、たった一頭のために全てを棒に振るような賭けはすべきじゃないんじゃないか。
自分の立場を守るのも、それによってこれから一凛に守られるたくさんの動物たちのことも考えれば、ハル一頭にその将来を奪われるのはどうかと思う」
またちらりと一凛の方を見る。
「でもハルと出会わなければ、わたしはアニマルサイコロジストにはなっていなかったもの。ハルはわたしにとって特別なの」
「その特別ってさ、どういう意味?」
「どういう意味って?」
依吹はハンドルを握った指を苛立たし気に動かす。
「依吹の言いたいことは分かる。もしかしたらわたしは自分の職を失うかも知れない。でもそれがハルのためにだったらいいの」