雨の降る世界で私が愛したのは
心の中で舌打ちをしさらに視線を下に逸らすと一凛の白い首が襟元からのぞいて見えた。
その奥にまた黒い毛と、花びらのような跡があった。
「依吹なにするのよ、やめて」
気づくと一凛の服のボタンに手をかけていた。
「服脱げよ、まさか体中ハルの毛だらけなんてことはないだろうな」
お互いの視線を絡ませたまま、数秒だった。
とても長い数秒だった。
「そうだったら駄目?」
一凛は言った。
「なに言ってんだよ。自分で言ってる意味分かってんのか」
ドアを開け外に出ようとする一凛の腕を掴み、もう片方の手でドアにロックをかけようとするが激しく抵抗する一凛と揉み合いになる。
「いたっ」
わざとではなく依吹の腕が一凛の顔に激しくぶつかった。
腕時計をはめた方の手だった。
一瞬依吹の脳裏にハルの充血した目がよぎる。
頰を押さえた一凛が顔をあげる。
「ハルを愛しているの」