雨の降る世界で私が愛したのは


「つまりハルは物なんだよ。法律上。そんな簡単なことさえ忘れてしまうほどハルに惚れてたか」

 最後は声色に皮肉を込めて依吹はそう言った。

「どうして被害届けを出さないの?」

 一凛の声は震えていた。

 依吹は寂しそうな顔をした。

「出すわけないだろ。一凛が捕まると知っていて」

「じゃあ、わたしはなんの制裁も受けないのね」

 依吹はうなずき一凛を気づかいながらもはっきりと言った。

「今回はもう無理だと思う、ハルを救うのは」

「わたしだけ無事でハルだけが」

「一凛分かってくれ、俺も一凛を庇うのでやっとなんだ。もともとハルはそうなる運命だったんだ」

「終わるときは一緒だと自分に誓ったのに」

「一凛」

 一凛の一番望まない結末だった。

 それでもハルは。

 ハルのことだ、この結末を一番望んだだろう。

 床の隅に拾い残しのガラスの破片が光っていた。



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