雨の降る世界で私が愛したのは
宿された命
そんな一凛に追い打ちをかけるようにある事実が知らされた。
なんでそれを早く教えてくれなかったのかと母親を責めると、連絡がつかない一凛の方が悪いと逆に叱られ、返す言葉がなかった。
警察が一凛を探して家を訪れたのはハルを逃亡させた疑いではなく、ただ単にアニマルサイコロジストとして捜査に協力して欲しいというものだったのだ。
それが分かっていたらもっとまともな物をハルに食べさせてあげることができたのに。
あんなにも苦しい生活をする必要もなかったのに。
いや、それよりもハルが捕まることはなかったかも知れない。
同じところにずっと居てしまったから見つかってしまったのだ。
もっと転々と隠れる場所を変えていたらこんなことにならなかったはずだ。
自分が警察に追われていないと分かっていれば、いくらだって方法はあったのに。
自分の愚かさを呪った。
母親との電話を切ったあと呆然としている一凛に依吹はやさしく声をかける。