雨の降る世界で私が愛したのは


 喫茶店の前で一凛と別れた後ほのかは車から降りるとそっと一凛のあとをつけた。

 とにかく一凛とハルがどこに隠れているのか見つけ出さないといけないと思った。

 駅に入る一凛を追ってほのかも改札をくぐる。

 間違った愛に狂った一凛を救う任務に自分はついたのだ。

 そう勝手に思い込んで意気込んだ。

 ホームに滑り込んできた電車に一凛はふらつきながら乗った。

 隣のドアからほのかも同じ電車に乗り込む。

 車内に人はまばらで一凛に気づかれるのではないかと冷や冷やしたが、しばらく一凛を観察していたほのかはそんな心配が全くないことが分かった。

 一凛は自分が一凛の目の前に立っても気づかないのではないかと思うほど、ぼんやりとしていた。

 その目はどこも見ていないように見えた。

 急に一凛は眉間にしわを作り苦しそうな表情を浮かべた。

 その目から涙がこぼれ落ちた。

 前に体を倒し一凛は震えながら嗚咽をもらした。

 周りの人が遠巻きに一凛の様子をうかがっている。

 ほのかの鼓動が早くなる。



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