雨の降る世界で私が愛したのは
一凛は小さく哀れに見えた。
このまま萎んでなくなってしまうのではないかと思った。
白人の男が一凛の前に立った。
心配する男の手を振り払うと一凛は電車を駆け降りた。
ほのかは電車の中からホームを駆けていく一凛の姿を見守った。
あんな一凛に自分は何をしようというのだ。
ほのかは自分に問いかける。
あんなに弱り果てた一凛を。
それでも必死に愛に生きようとしている一凛を。
間違った愛を正す?
疑う余地のない正義だと信じていた。
でも間違った愛、そんなものは存在するのだろうか?
一凛とハルが愛し合って誰が傷つくというのだ。
誰に迷惑がかかるというのだ。
追いつめられた二人を、無力で無害の二人を、自分は叩き潰そうとしていたのだ。
ふと車内に目をやると、近くに一組の男女が座っていた。
どこにでもいる幸せそうなカップル。
誰に憚ることなく身を寄せ合い、自分たちが愛し合っていることを周りに宣言しているかのようだ。
ときどき彼を見上げる彼女の嬉しそうな表情とさっきの一凛の表情はあまりにも対象的だった。