雨の降る世界で私が愛したのは
震えて泣いていた一凛。
小さく惨めに見えた。
でも一凛は綺麗だった。
潤んだその瞳は澄んでいた。
どんな屈強にも立ち向かおうとする強い愛を一凛はその胸に秘めているのだ。
それこそが自分が探し求めているものなのではないだろうか?
ほのかは次の駅で降りると、向かいのホームに立った。
その足取りは一凛を追っている時よりもずっと軽かった。
ほのかの目の前でカップを両手で包む一凛は電車の中で見た一凛と同じように小さかった。
「でもわたしとハルはもう終わりなの」
「それで一凛はいいの?諦めるの?」
一凛はゆっくりとでも深くうなずいた。
「これが運命なんだと思う」
テーブルの端に置いてあった一凛の電話が震えた。
見るつもりがなくてもスクリーンに浮かび上がる『依吹』という文字が見えた。
目配せしてくる一凛にほのかはうなずく。
一凛が電話で話している間ほのかは少しぬるくなった紅茶を啜る。