雨の降る世界で私が愛したのは


 その日の雨は風に吹かれてたなびく針のような細かな雨だった。

 そんな雨の中、依吹のお父さんの葬儀は行われた。

 肝臓がんだったそうだ。

 ここ一年ほどずっと入院していて先月から家で療養をしていたらしい。

 一凛はまったく知らなかった。

 依吹のお母さんはずっと前に亡くなっていて、喪主は依吹のお姉さんが務めていた。

 依吹は葬儀の場にいなかった。

 顔見知りの近所の人たちや、見たことのない依吹の親戚の人たちに混じってお焼香をあげた一凛は他にすることもなく辺りを見回す。

 依吹のお姉さんは気丈に振る舞いながらも、目が真っ赤に腫れ憔悴しきった顔をしていた。

 なぜこんなお姉さんを依吹は支えてあげないのだろうと、少し腹立たしい。

 でも依吹も依吹で哀しんでいるのだ。

 きっと今どこかに一人でいる伊吹のことを考えると、急に依吹に会いたくなった。



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