雨の降る世界で私が愛したのは
「最後にハルとは会うんでしょ」
「会って、わたしは依吹と結婚します、だからハルは雨を鎮めるために健やかに生け贄になって死んでくださいって言うの?」
「ごめん一凛」
「謝んないで」
一凛は気丈に振る舞っているだけなのだ。
その内側は哀しみと怒りでぼろぼろなのだ。
ほのかは一凛のお腹に一つの魂が宿ってくれて本当に良かったと思った。
そうでなければもしかしたら一凛はハルを追おうとしたかもしれない。
「それにしてもさ、誰が通報したんだろうね」
ほのかはぽつりと呟いた。
一凛は手を休めて窓の方を見た。
「誰かに見られてたんだと思う。夜中だとはいえ外に出ちゃいけなかったの」
窓が白く光り遠くでどすんと低い音がした。
一凛はおもむろに立ち上がると窓のカーテンを閉めた。