雨の降る世界で私が愛したのは


 ハルを通報したのはこの町の住人ではないのではないか。

 そんな考えがほのかの頭をよぎった。

 この町に来る目的は一凛を探すことだったが、それとは別にハルを通報した人間に一言言ってやりたいという気持ちがほのかにはあった。

 一言と言っても実際に何を言おうとしているのか自分にも分からなかったが、通報した人間が自分が手柄を立てたと思って意気揚々としていたら許せない思った。

 暗い雨のなか動くものが見えて目を凝らすと、二匹の猫が雨を避けながら建物の隙間に入っていった。

 子連れの猫だった。

 やはり一凛のお腹の子はハルの子なのではないだろうか?

 ほのかの中にあった不安は今や確信に近くなっていた。

 一凛がいなくなった理由はそれ以外考えられない。

 依吹はしばらく動物園に張り込んでも一凛が現れないのが分かると、警察に届けようと言い出したが、ほのかはそれを必死で止めさせた。

 もし本当に一凛のお腹の子がハルの子だったらなるべくひっそりと出産させないといけない。



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