雨の降る世界で私が愛したのは


『それ、どういういう意味だよ』

 凄みのきいた声だった。

「言葉通りよ」

 ほのかも負けじと言った。

「颯太は一凛とハルの関係を知ってると思う。警察にハルのことを通報したのは颯太なんじゃないかとわたしは思うの。だから颯太は一凛に近づいた」

 颯太は一凛をどうするつもりなのか。

「とにかくぶっ飛ばしてそっちに戻るから」 

 ほのかは早口でそう言うと電話を切った。








 一凛の視界がだんだんとぼやけていく。

 自分の名前を呼ぶ颯太の声が遠くて聞こえた。

 自分の妊娠に気づいてすぐのある日道端でうずくまっているところを颯太に助けられた。

 颯太はそのまま近くにあるという彰斗のクリニックに一凛を連れて行った。

 一凛の体を診た颯太は渋い顔をした。

「一凛ちゃんがよかったら、俺に最後まで診させてもらえないかな」

 そう言ってきたのは颯太の方だった。

 どうしようか迷ったが一凛に選択はなかった。

 自分の妊娠に問題がありそうだということは薄々気づいていた。




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