雨の降る世界で私が愛したのは


 とてもじゃないがひとりで出産することは不可能に思えたし、町の医者にかかる勇気もなかった。

 一凛自身にも、お腹の子がハルの子なのか依吹の子なのか分からなかった。

 依吹の子である可能性もある限り堕ろすことはできなかったし、ハルの子だとしてもその選択は一凛にはなかった。

 もしハルの子だったら、一生自分が抱えて生きて行こうと覚悟していた。

 自分の我が儘であることは分かっていた。

 迫害だけが待ち受けている世界にハルの子を産み落とすのだから。

 それは間違っている!

 全てがそう言っていた。

 でも一凛は正しくあろうとすることなど、もうずっと前に止めていた。

 一凛はただ自分の気持ちに素直であろうと、愛おしいと思えるその気持ちだけに向かって行こうと決めていた。

 この子を守るために自分が盾になろうと。

 そしてもし依吹の子だったら。

 その時は一凛は依吹の愛を心から受け止めようと思った。

 それが運命なのだ。

 今を今までをハルを全て封印しようと。





< 324 / 361 >

この作品をシェア

pagetop