雨の降る世界で私が愛したのは
「元気な赤ちゃんだよ」
その言葉に一凛は胸が熱くなった。
「よかった」
一凛は笑みを浮かべる。
颯太と一凛の温かな空気を引き裂くように部屋の扉が激しく開いた。
「一凛」
微笑んだまま一凛は顔を向ける。
はっきりとしてきた視界にほのかの姿が映った。
「颯太その子をどうするつもり」
ほのかは叫んだ。
ほのかは颯太を睨みつけている。
「言ってる意味が分からないな」
薄いピンク色の毛布に包まれた赤ん坊を抱えた颯太の声は平坦だった。
「最初から全て知っていて一凛に近づいたんでしょ。その子をこっちによこして」
ほのかは両腕を伸ばして颯太に歩み寄る。
颯太は片手を大きく開いてほのかに突きつけた。
「近寄るな」
その気迫にほのかは思わず足を止める。
背後に人の気配を感じた。
振り返ると射るような目をして伊吹が立っている。
ほっとしたのもつかの間、
「颯太、その子を処分してくれ」
伊吹のその言葉にほのかは固まった。
「伊吹?」