雨の降る世界で私が愛したのは
「その子はこの世に産まれて来てはいけない子だ。その子も誰も幸せにはならない。世間に知られる前に処分してくれ」
「依吹なに言ってんのよ」
依吹の腕を取ろうとするほのかの手を依吹は振り払った。
「警察に通報したのは俺だ。颯太じゃない」
一凛の体が大きく震えるのがほのかの視界の端に映った。
「一凛のためだ。だから颯太頼む、こっそりその子を葬ってやってくれ」
颯太は伸ばしていた手を引っ込め、両手で優しく赤ん坊を抱き直した。
「二人ともなんの事を言ってるのかさっぱり分からないな。こんなに可愛い赤ちゃんを一体どうするって言うんだ」
颯太は上半身を傾けた。
颯太の腕の中で毛布に包まれた赤ん坊の顔がのぞいた。
りんごのような真っ赤で小さなそれは健やかに寝息を立てている。
それを見た依吹はうめき声を漏らし、やがて顔をくしゃくしゃにして笑った。
「なんだ、そうだったのか」
体から力が抜けたようにふらつきながら寄ってくる依吹から颯太は離れる。