雨の降る世界で私が愛したのは


「依吹、この子はおまえの子じゃない。俺と一凛ちゃんの子だ」

 依吹は鼻で笑った。

「なに馬鹿なこと言ってんだ颯太。その子を抱かせてくれ」

「嫌だ」

 依吹は一凛を見た。

「一凛」

 伊吹はベッドの上の一凛に視線を向ける。

 一凛はまさぐっていた手を振り上げたかと思うと勢いよく振り下ろした。

 一凛の手から放たれたそれは伊吹の顔をかすめ床に金属的な音を響かせて転がった。

 医療用のハサミだった。

「出てって、この子はわたしと颯太さんの子よ」

「一凛なに言ってるんだ」

 近づいて来ようとする伊吹に一凛は手当たり次第手の届くものを掴んで投げつけた。

「出て行って、出て行ってよ」

 伊吹の足が止まった。

 その腕をほのかが引っ張る。

「伊吹、とりあえず行きましょう」

 ほのかは無理やり伊吹を引っ張り部屋を出た。

 クリニックの外に出ると伊吹は頭を抱えた。

「混乱してる。何がなんだか」






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