雨の降る世界で私が愛したのは


 いやそれは俺自身で見つけなければいけなかった。

 誰にも知られたくない。

 知られるのは嫌だ。

 仕事が終わって誰もいなくなった研究室で俺は毎晩血眼になって自分の遺伝子を調べた。

 異常な遺伝子は他にはないだろうかと。

 そしてそれ以上にそれとは反対のことを俺は祈っていた。

 この呪われた瞳以外に異常なものはありませんように。

 俺は他の人と同じでありますように。

 幸い色覚以外の異常遺伝子は見つからなかった。

 それでも俺は調べ続けた。

 自分の遺伝子が他の人の遺伝子と同じであることを確認し続けなれければ不安で仕方がなかったんだ。

 それがどんなことか分かるか?

 だからこれ以上俺の遺伝子を残してはいけない、誰とも交わってはいけない、誰も愛してはいけない。

 ずっとそう自分に言い聞かせてきたんだ、それを!」

 伊吹は一度激しく拳を壁に叩きつけると、一凛を睨んだ。


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