雨の降る世界で私が愛したのは
「一凛、おまえはハルと。
ハルを愛してるだと?
そんなことが赦されると思ってるのか?
姉貴は言った。
父を愛していたと。
誰に分かってもらえなくてもいい、でも自分の愛は真実の愛だと」
ハッと伊吹は短く笑った。
「その真実の愛とやらで産まれたのがこの俺だ。
人とは違う肉体を持ち、いつも何かに怯えなければならない。
それが真実の愛の結晶かよ」
一凛は哀しい目をした。
「伊吹はどうやったら幸せになるの?」
一凛は伊吹のお姉さんと話した遠い日のことを思い出していた。
死んだ父親の傘を握りしめていた美しい人。
「普通に産まれてたら、愛し合っていない二人でも誰でも良かった?」
「愛なんて形のないものは生きていくのに絶対不可欠なものじゃない」
「それならわたしを放っておいて。
伊吹を幸せにできるのは伊吹しかいない。
他の誰でもない。
お姉さんと死んだお父さんを恨み続けても幸せが遠のくだけ」