雨の降る世界で私が愛したのは
ハルは瞼の裏がきらめいて目を開けた。
目の前に先の尖った葉が揺れていて、その先端に小さな羽虫が止まっている。
遠くで近くで鳥の鳴き声が聞こえる。
ねっとりとした空気が揺れると虫は乾いた羽を震わせどこかへ飛んで行った。
身を起こそうと体を動かすと腹部に激痛が走った。
そのままハルは仰向けに倒れ込む。
高いところに切り取ったような青い空が顔をのぞかせていた。
その端に輝く太陽が見えた。
遠くで人の声が聞こえた。
そこから先のことはあまり覚えていない。
何人もの男たちにハルは担がれどこかへ運び込まれた。
鋭い腹部の熱は体全体を火照らせ、頭は生ぬるい湯に突っ込まれたようにまともな思考を奪われる。
無抵抗に漂う意識の間に時々鮮明な情景が差し込んだ。
充血し澱んだいくつもの目だった。
その瞬間ハルは苦しげに喉を鳴らす。
火照って膨らんだ体をよじり無意識に何かをまさぐるように両腕で宙を掻きむしった。