雨の降る世界で私が愛したのは
その瞼に焼きつけられた残影とも呼べるようなものは昼と夜と問わずハルを襲った。
空気が水分を含んだ湿度の高い雨の日に、それは多かった。
時々ハルの耳元で誰かが優しく何かをささやいていた。
体から熱が引き視界と意識がはっきりとしてくる。
自分を見下ろす気配を感じ顔を向けると二つの瞳と目があった。
髭を蓄えた人間の男だった。
男は何か言ったがハルには理解できなかった。
男の声は聞いたことのある声だった。
時々自分の耳元で囁かれていたそれと同じだった。
体は次第に軽くなり、腹部の痛みが体を動かした時にわずかに残る程度になった頃、ハルは檻に入れられどこかに運ばれた。
どこか遠いところへ行こうとしているようだった。
目隠しで覆われた檻の中で、それでも感じる質感の違う空気と聞こえてくる音、そして匂いがハルの世界だった。
いくつかの世界を経たあとハルは広いところへと移された。
そこが到着地点なのだと直感した。