雨の降る世界で私が愛したのは


 そう言われて見るとゴリラの内腿からお腹にかけて広い範囲で毛が乱れて生えているところがある。

 お腹の中から何発かの猟銃が見つかったらしく、たぶん密猟者に襲われたんだろうと依吹は言った。

「彼、名前はなんて言うの?歳は?」

 依吹は面白いものでも見るような目をして一凛を見る。

「彼?まるで人間みたいに言うんだな。はっきりとした歳は分からないけどシルバーバックだから人間だったら成人したオスさ」

「シルバーバック?」

「ああ、ゴリラのオスは成熟すると背中の毛が銀白色になるんだ。それをシルバーバックって呼ぶ。名前だけどみんな睦雄って呼んでる。昔の凶暴な殺人鬼の名前さ」

「ひどい」

「仕方ないさ、なにを訊いても答えないし、凶暴すぎて手に負えないし、客になにかあると困るからここに隔離してるんだ」

 だからプレートも何もないのかと一凛は納得した。






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