雨の降る世界で私が愛したのは
「発見されたとき他のゴリラもその場にいた形跡があったんだけど、撃たれたのは睦雄だけだったみたいなんだ。頭が弱いから逃げ後れたんだと思う。そろそろ行こうぜ。俺を迎えに来たんだろ?」
依吹はくるんと自分の傘を回して雨水を飛ばすと歩き出した。
雨水を飛ばされた一凛は、ちょとぉ!と怒りながら依吹を追いかける。
久しぶりに一緒に歩く依吹はずいぶんと背が伸びていた。
肩幅も傘を握る手も大きくしっかりと骨張っていてもう少年の面影は残っていない。
「別に連れ戻しに来たわけじゃないけど、依吹にどうしても会いたくなって」
一凛は正直に自分の気持ちを口にした。
「会いたくなってだなんて、彼氏が聞いたら怒るぜ。この前バス停で一緒にいたの彼氏なんだろ」
「いちおう」
何だよその一応って、と依吹は鼻で笑う。
「依吹は彼女いるの?」