雨の降る世界で私が愛したのは
ゆっくりと歩み寄っているうちに電話は静かになってしまった。
颯太からのメセージがコロンと音を立てて届く。
読まなくても内容は分かった。
たとえ内容が違ったとしても、明日の朝分かることだ。
一凛はベッド脇にずっと置いたままだった本を手に取る。
そのページを深呼吸と共にめくった。
『貴族の娘として産まれ、両親から愛され全てを与えられて育った娘は、それは美しくその心持ちも汚れを知らない天使のようだった。
彼女に言い寄る男たちは後をたたなかったが、娘を深く愛する父親が本当に娘に見合う男でなければと、ことごとく彼らをはねのけた。
娘も父を深く愛していた。
いつか父が選んだ男と結婚するつもりでいた。
しかし皮肉にも娘が初めて恋した相手は彼女とは身分の違う下層階級の男だった。
身分違いの恋に苦しんだ二人は遂に手に手をとって駆け落ちする。