雨の降る世界で私が愛したのは
「わたしを探さないでください」
娘は愛する父に一枚の手紙を残した。
逃れる二人に追っ手の手が伸びることはなかった。
最初は愛だけを頼りに寄り添うように生活していた二人だったが、慣れない貧しい生活に身を置く娘を見るのが男はだんだんと辛くなっていく。
白桃のように白く水々しかった肌はしぼみ薄汚れ、絹のような輝きを持っていた髪はトウモロコシのひげのようになった。
それでも娘の心だけは以前と変わらず純粋で男への愛に満ちあふれていた。
男にはそれが何よりも辛かった。
まだ自分を責めてくれれば、こんなはずじゃなかったと罵ってくれれば気が楽なのにと。
自責の念にかられ苦しむ男にある日娘は言った。
「あなたがそうやって苦しむことはわたしにとって貧困よりも辛いことなのですよ」
その晩、男は決意した。
娘を父親の元に返そうと。
自分が娘にしてやれる深い愛を表現するにはそれしかないのだと。