雨の降る世界で私が愛したのは
説得しても娘が聞かないことが分かっていた男は他の女を抱いた。
「ぼくが君を愛していたのは君が美しかったからだ。昔の見る影もない醜い君にもう興味はない」
三日間泣きはらした娘は四日目の朝家を出て行った。
家に戻ってきた娘を父親は温かく迎え入れた。
「わたしはおまえが戻ってくることが分かっていたよ。この世の中には愛だけではどうしようもないことがたくさんあるのだ」
彼はそう言いながら男が本当に自分の娘を愛していたのだと知り、そっと心の中で男に感謝した。
娘は父の選んだ男と結婚することになった。
申し分のない相手だった。
目の色が男と同じだった。
初夜が明けた朝、娘は自分の躯から男の痕跡がすべて消えてしまっていることに気づいた。
ない、どこにもない。
あの人の香り、あの人の指の感触。
わたしの躯のどこにもない。
代わりに娘の躯にあるのは横でまだ寝ている結婚相手の男のものだった。