雨の降る世界で私が愛したのは


「颯太さん乗って」

 颯太は勝手にしろ、とバスに乗り込んだ。

 一凛を雨の中に残しバスは車体を揺らせながら走っていった。

 誰もいなくなったバス停に一凛が佇んでいると自転車に乗った青いポンチョが目の前を通りすぎる。

「遅刻かよ」

 通り過ぎざま、そう言い捨てられる。

「依吹」

 一凛は大声をあげた。

 数メール先にいた依吹はのろりとUターンをして戻ってきた。

「なに」

「後ろに乗せて」

 依吹は自分の腕時計を見た。

「送って行ってたら俺も遅刻すんだけど」

「学校には行かない」

「・・・・」

 依吹は自転車の向きを変え来た道を戻ろうとする。

「待って」

 一凛は依吹に駆け寄り、無理やり自転車の後ろに乗った。

 依吹は肩を落とし一度天を仰ぐとだるそうに振り向いた。 

「それじゃ濡れるだろ、ほら」

 依吹は自分のポンチョを一凛に着せると一凛の傘を片手で持ち自転車をこぎ始める。




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